ドアが開いた。
人の多さに一瞬ひるんだ。すし詰め状態の電車の中へ
無理やり身体を押し込めると、目の前にいたサラリーマン風の男と目が合った。
すると その男、なぜか自分の両手を肩の上まであげてホールドアップ。
もしや、俺は痴漢なんかじゃない!というアピールか?
周りの視線が集中した。
マズイ、このままでは私の方が
『痴漢に狙われると思っている高慢ちきな勘違い女』と思われてしまう。
私は捨てられた子猫ちゃんの様な顔をして小首をかしげてみせた。
『どうして両手を上げているの?私わからないわ』と言う態で。
目が合った。さらに続けた。
『私は変な男に狙われた、可哀相な子猫ちゃん』
すると男は、恥ずかしそうに うつむき、両手を上にあげたまま
ぎゅうぎゅう詰めの電車の中で そろりそろり、と向きを変え
私に背を向けた。
誰かがクスッと笑った。
ウシシシ、皆が見ている。ダメだ、ニヤケが止まらない。
清く正しく美しく、人に優しく生きる日々。
たまには やってみたくなる。
目的地へ着き電車を降りようとした時 近くにいた男子高校生が
私に向かって親指をグッと突き出し『OK』と言わんばかりの
仕草をして、ニヤッと笑った。
何がOKなのだ??
私は、子猫ちゃんの顔をして小首をかしげて電車を降りた。







